平成19年度から博士前期課程は新教育システム(αコース,πコース)を,平成20年度からαコース,πコース,σコースを導入しました.
博士前期課程では,物質科学に関する高度な専門知識を基盤に,研究・開発を主体的に担う人材の育成を目指した教育を行っています.
具体的な人材像は下記の通りです.
(1) 博士後期課程への進学を通じて将来の科学技術の発展を担う創造性豊かな研究者を目指す人材
(2) 主に産業界における開発研究業務に主体的に携わる人材
物質創成科学研究科では多様な知識と経歴をもつ学生を受入れ,物質科学分野における先端研究者・技術者へと育成することを目的としております.本研究科のカリキュラムはこのような条件を考慮して編成され,学生の希望する分野,進路に合わせた柔軟な講義の履修を可能にしています.さらに,博士後期課程への進学希望者は,前後期課程一貫の教育を受けるαコース,あるいは,ダブルメジャーを目指した複数専門分野に取り組むπコースを選択することができます.
1.集中的な授業日程
授業科目は,4月から9月の春学期に集中して開講されます.教育研究の概略を下図に示します.秋学期は,物質科学の融合分野をカバーする集中講義形式の物質科学特論I-IVと英語スキル向上のための物質科学英語I~IIIのみが行われています.また,特別課題研究や修士論文研究などが,10月から本格的に取り組める日程を組んでいます.

2.幅広い分野をカバーする基礎科目
物質科学の広範な分野を網羅し,かつ多様な分野からの入学者に対応するために,物性・デバイス系科目から化学・生物系科目までの幅広い分野で基礎が学べる「基礎科目」を設置しています.具体的には,まず4月入学直後に必修科目の「光ナノサイエンス概論」で物質創成科学研究科の全研究室で行われている研究の基礎と概要が,各研究室の教授,准教授により講義され,続いて,物質科学における光ナノサイエンスの基盤となる学術的なプラットホームの形成のための「光ナノサイエンスコア」が全員必修で講義されます.また,光と物質の相互作用を理解するための基本科目「光と電子特講」や有機材料・生体材料の創成に必要不可欠な基本科目「光と分子特講」,および光ナノサイエンスの先端融合領域開拓に必要な知識を講義する「先端融合物質科学」を開講し,これらの科目では習熟度に応じてエレメンタリークラスとアドバンストクラスのクラス別の講義を行います.さらに,物性科学のための「現代量子力学特論」「現代物理光学特論」,デバイスの基本的な原理を理解するための「先端半導体工学」「先端光電子工学」「先端電子材料工学」,有機材料・生体材料創成のための「現代有機化学特論」「先端高分子化学特論」「現代無機化学特論」「先端分子評価」や「先端生化学」が開講され,すべての科目が聴講できるカリキュラムを取っています.
3.基礎科目を基礎とする専門科目と融合領域をカバーする物質科学特論
9月に開講される専門科目は,7月上旬まで開講された基礎科目の知識を基礎としており,物性・デバイス系と化学・生物系に分かれて先端分野の学習ができます.さらに,物性・デバイス・化学・生物の融合分野をカバーする「物質科学特論」4講義が,外部の最先端研究者からなる非常勤講師により集中講義形式で秋学期に開講されます.
4.国際コミュニケーションの能力向上
先端科学技術を学ぶ学生にとっては国際的なコミュニケーション能力は必要不可欠であり,外国人講師による必修科目の「物質科学英語Ⅰ」および希望者による「物質科学英語II」「物質科学英語III」を開講しています.「物質科学英語ⅠI」は5月から11月まで15名程度の小クラス制で行われています.入学直後と秋季に行われるTOEIC-IPテストの受験が「物質科学英語I」の一環として義務付けられており,この能力試験などにより,英語能力の向上度をチェックします.また,英語でのプレゼンテーションスキルや学習スキルの向上を望む学生のために,「物質科学英語II」「物質科学英語III」が「物質科学英語I」の終了後に開講されます.
5.社会との関わりを深めるための充実した一般科目
物質科学の研究は,社会との結びつき無くしてはありえません.この観点から,技術者に求められている倫理を学ぶ「物質科学と倫理」,知的財産制度や特許およびわが国の科学技術政策の実施体制と求められる人材について知る「科学技術政策と知的財産」が必修科目として開講されています.また,春学期には「技術ベンチャー論」が開講され,実際に起業を行うにあたってビジネスモデルの作成法などを学びます.
6.講座配属と修士論文研究,連携講座,短期修了,副指導教員制およびコース制
講座配属は,「光ナノサイエンス概論」での各研究室の研究の基礎と概要を聴講し,希望講座での「物質科学実験・実習」のあと,5月下旬に行われます.数回の希望調査を行い,最終的に配属希望者が多数の場合は,「光ナノサイエンスコア講義I~III」の成績等をもとに配属を決定します.
特別課題研究や修士論文研究などは,配属決定後スタートしますが,専門科目の終了する10月から本格的に行います.連携講座に配属された場合には連携機関先で修士論文研究などを行うこともあり,この場合でも研究科内に設けられた各連携講座やホスト講座の居室を利用できます.また,主指導教員と副指導教員からなる複数指導制により,きめ細やかで多面的な指導を行うとともに,各学生が高度で多方面な教育・研究指導を受けることができます.さらに,所定の単位を修得し,優秀な研究成果を修めた場合には,2年未満の在学期間で修士の学位を取得することができます.
博士後期課程への進学希望者は,αコースあるいはπコースを選択することができます.αコースでは,前期課程の当初から博士論文の完成を目指して集中的な研究指導を行い,専門領域に関する深い学識と豊かな創造力を有する人材育成を目指します.また,積極的に短期修了を推進しています.πコースでは,融合領域研究を開拓する融合研究展開能力の強化を目指し複数専門分野における研究指導を行います.このため,πコースでは博士前期課程から博士後期課程への進学時に指導教員を変更します.αコースあるいはπコースを選択した場合には,主指導教員と副指導教員にさらに2名以上の教員を加えたスーパーバイザーボードを組織して,きめ細かい指導体制のもとで円滑な学位取得を目指します.また,これらの博士後期課程進学希望者については,講座配属を優先する制度を設けています.
博士前期課程の学生で広汎な物質科学の専門知識と方法論を身につけた高度専門職業人を目指す者はσコースを選択します.σコースでは,主指導教員と副指導教員のきめ細かい指導体制のもとで円滑な学位取得を目指します.
7.研究グループシラバス
研究指導の透明性を高め,学位取得を客観的,厳格にかつ円滑に行うために,各研究グループは研究指導に対するシラバスを公開しています.研究グループシラバスには,教育体制,研究やゼミの進めかたなどのほかに,グループごとの到達目標などが明示されます.このグループシラバスは,研究科全体で議論しながら改善を進めています.
(研究グループシラバスのページへ)
博士後期課程では,物質科学を深く,幅広く習得させることにより,産官学を問わず物質科学の融合領域で国際的に活躍し,次世代を担う創造性の豊かな研究者の育成を目標としています.
特に,自立した研究者に求められる課題発見能力と課題解決能力に加えて,以下のような素養を身につけることを目指したカリキュラムを構築しています.
(1) 創造性の豊かな研究者に求められる素養深い学識
(2) 研究推進力,融合展開能力
(3) プレゼンテーション能力
(4) 語学力を含めた国際性とコミュニケーション能力
(5) 研究経営能力
これらの目標のために以下の3つのコースを設置しています.
博士後期課程では最先端の研究者が揃う教授陣とのディスカッションや講義を通して深い学識を身につけるとともに,所属の研究室で指導を受けながら,物質科学に関する最先端の研究を行い博士論文の作成に取り組みます.研究プロセスの一環として,得られた研究成果のプレゼンテーションを重視しています.特に,カリフォルニア大学デービス校で本研究科学生のために整備されたプログラムによる「物質科学英語研修」(1ヶ月)により,実践的な英語力を身につけることができます.国際会議で発表する場合には外国旅費の援助を行うとともに,外国人講師による発表要旨やプレゼンテーションの個別指導を受けることができます.さらに,英文学術雑誌へ論文を投稿する場合にも添削指導を受けられます.国際共同研究や国際会議でのコミュニケーション能力の強化のため「物質科学英語IV」「物質科学英語V」などの国際化科目の開講やTOEIC-IPテストの受験を奨励しています.また,在学中にティーチングアシスタント(TA)やリサーチアシスタント(RA)として教育・研究の補助を行い,教育や研究の経験を積むこともできます.研究指導においては主指導教員の指導に加えて,他分野の研究者を含む4-5名からなるスーパーバイザーボードによる複数指導制を取っており,高度で多方面な教育・研究指導を受けることができます.優秀な学生については積極的に短期修了を推進しています.
1.博士論文研究
博士後期課程では最先端の研究を進め優れた研究成果を博士論文としてまとめることが重要です.問題を見つけ出して,研究計画を立て,創意を持った研究を遂行して解法を提案し,さらには解析および考察のうえでその評価を行うことが求められます.関連研究を調査すること,自分の提案を客観的に評価することで自らの研究成果の価値や位置づけを明確にするとともに,残された課題を明らかにすることも欠かせません.指導教員およびスーパーバイザーボードからの細やかで多角的な研究指導を受けることで,高度な研究推進能力や融合展開能力を身に付けます.さらに得られた成果を学術論文や国際会議で公表し,プレゼンテーション能力の強化をはかります.
2.スーパーバイザーボード
主に指導を受ける研究グループ以外の教員との議論を通じて幅広く深い学識を身につけ,なおかつ多様な視点からの多角的な討論を経験することで,ディスカッション能力や融合領域への展開を意識した研究指導の強化を目指します.また,研究成果や研究の展開方向に関する多角的な討論を深めることは,学位の予備的な審査にもつながりスムーズな学位取得にもつながります.
スーパーバイザーボードは異なる研究グループおよび異なる研究分野の教員を含む4-5名の教員から構成されます.それぞれのスーパーバイザーは定期的に個別の研究指導を行うとともに,中間報告審査会では集中的な指導を行います.また,指導内容や評価は電子化されているスーパーバイザーレポートにまとめられ,学位審査の参考資料として取り扱われます.
3.授業科目と単位制の導入
博士後期課程の修了と学位の取得に向けたプロセスを明確にする目的で平成 20年度より博士後期課程に単位制が導入されました.国際性の強化を目指した国際化科目,学識を深め融合領域の展開能力の強化を目指した融合専門科目,研究経営能力の強化を目指した提案型演習科目,異分野の研究者とのディスカッション能力やプレゼンテーション能力を強化する融合ゼミナール,先端的な物質科学の研究推進能力を強化する研究探求科目などから10単位以上を取得することで,次代を担う研究者に求められる高度な能力をスムーズに身につけることができます.また,単位取得には,働きながら学位取得を目指す方(τコース)にとっても可能なように配慮がなされています.
4.国際性の強化
国際的に活躍する研究者を育成するため,さまざまな国際性強化プロジェクトを推進しています.
5.競争的研究経費奨励制度
将来の科学技術の発展を担う指導的な研究者には,研究活動をマネージメントする能力,すなわち研究経営能力が求められています.研究経営能力には研究に関する企画,提案,推進,報告といった研究推進に関する能力とともに,倫理,コンプライアンス,知財,社会連携などの視点から研究活動を円滑にコーディネートする能力が重要です.このような研究経営能力は,指導教員によるきめ細かい研究指導に加えて,競争的研究経費奨励制度による提案公募型の研究プロジェクトを主体的に企画提案・運営することで一層の強化をはかります.πコースの学生は「リサーチマネジメント演習B」として単位認定されます.
6.研究グループシラバス
研究指導の透明性を高めるために,博士後期課程においても研究グループごとに研究指導に対するシラバスを作成しています.シラバスに則って,学位取得を客観的,厳格にかつ円滑に行います.
(研究グループシラバスのページへ)
博士学位論文が合格と認められた博士後期課程の学生の中から,優秀な博士論文研究を行った者を選び,その業績を称え,NAIST最優秀学生賞および最優秀学生賞を与えるとともに,賞金と記念品を贈ります.
特別課題研究や修士論文研究などが合格と認められた博士前期課程の学生のうち,学業および研究の優れた学生を選び,その栄誉を称え,NAIST最優秀学生賞および最優秀学生賞を与えるとともに,賞金と記念品を贈ります.
NAIST最優秀学生賞は,学位授与式において,奈良先端科学技術大学院大学支援財団理事長より贈呈されます.また,最優秀学生賞は,学長により表彰され,研究科長より贈呈されます.
受賞した博士と修士の学生は,3月中旬に開催される公開研究業績報告会で,研究内容を口頭発表するとともに,ポスターの特別展示を行い,広く社会に公表します.