研究室の教育・研究の概要
環境フォトニクススーパー研究グループ(グループリーダー:河合壯教授)グリーンバイオナノユニットは,細川陽一郎が独立研究者(Principal Investigator)として運営する新しい研究室です(H23年4月1日発足).レーザーにより細胞や蛋白質をナノレベルで操作・計測するための新技術を開発し,新しい観点から細胞や蛋白質同士の相互作用を明らかにし,細胞や生体組織のもつ環境適応感覚を学び,新しいグリーンイノベーションを開拓していきます.物理・化学から生物・医学におよぶ広い視野から科学と工学を見わたし,独自の観点から研究を進められる人材を育成していきます.
研究テーマ
1. 超短パルスレーザーを駆使した新しい細胞操作・計測方法の開発
光波の振幅数を数えられるくらいの時間に光を集中させた超短パルスレーザーを顕微鏡下で集光すると,光エネルギーを時間・空間的に極限にまで集中させた状態が達成されます.この濃縮された光エネルギーを細胞や細胞培養液に作用させると,ミクロンオーダーの集光点で爆発現象が誘起され,微小空間に強い衝撃波が発生します.この衝撃波を細胞に衝撃力として作用させることにより,単一細胞同士の接着力を測定したり(図1,図2),単一細胞へ遺伝子を導入したり(図3)することに成功しています.さらに,これまで難しかった1細胞への力学的な刺激にも成功しています.これらの細胞操作・計測技術は世界的に斬新なアイディアであり,多くの生物・医学分野の研究者と連携して,方法論の開発を進めています.
2. 細胞・生体組織のもつ環境感覚の探索
生物組織の形態形成において,蛋白質・細胞・組織の構造変化のダイナミクス(動力学)は,本質的な問題です.近年では,これらのダイナミクスと生体機能創発の関係が注目されており,"メカノバイオロジー"という新しい研究分野が創設されています.当研究室では,レーザー誘起衝撃力を利用した上記の方法を駆使することにより,植物細胞や動物細胞の環境適応感覚をメカノバイオロジーの観点から理解しようとします(図4).特に,動かないという選択をして生きている植物は,力,光,温度,水分などの刺激を感知し,生理機能や形態を柔軟に変化させることで環境適応し,自己の生存を図っています.この様な植物さらには動物の環境適応感覚を理解することで,環境,エネルギー,資源問題を見据えた将来の工学研究を探索します.
研究概要を説明する図
最近の研究業績
- Y. Hosokawa, M. Hagiyama, T. Iino, Y. Murakami, A. Ito, Non-contact etimation of intercellular breaking force using a femtosecond laser impulse quantified by atomic force microscopy. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 2011, 108, 1777-1782.
- Y. Maezawa, K. Okano, M. Matsubara, H. Masuhara, Y. Hosokawa, Morphological evaluation of cell differentiation after the isolation of single cells by a femtosecond laser-induced impulsive force. Biomed. Microdev. 2011, 13, 117-122
- T. Iino, Y. Hosokawa, Direct measurement of femtosecond laser impulse in water by atomic force microscopy. Appl. Phys. Express 2010, 3, 107002.
- Y.-E. Kuo, C.-C. Wu, Y. Hosokawa, Y. Maezawa, K. Okano, H. Masuhara, F.-J. Kao, Local stimulation of cultured myocyte cells by femtosecond laser-induced stress wave. Appl. Phys. A 2010, 101, 597-600.
- Y. Maezawa, Y. Hosokawa, K. Okano, M. Matsubara, H. Masuhara, In situ observation of cell detachment process initiated by femtosecond laser-induced stress wave. Appl. Phys. A 2010, 101, 127-131.
- Y. Hosokawa, S. Iguchi, R. Yasukuni, Y. Hiraki, C. Shukunami, H. Masuhara, Gene Delivery Process in a Single Animal Cell after Femtosecond Laser Microinjection. Appl. Surf. Sci. 2009, 255, 9880–9884.
- S. Matsuo, S. Kiyama, Y. Shichijo, T. Tomita, S. Hashimoto, Y. Hosokawa, H. Masuhara, Laser microfabrication and rotation of ship-in-a-bottle optical rotators. Appl. Phys. Lett. 2008, 93, 051107 (Cited to Nature Photonics 2008, 2, 590).
- T. Kaji, S. Ito, H. Miyasaka, Y. Hosokawa, H. Masuhara, C. Shukunami, Y. Hiraki, Non-destructive micro-patterning of living animal cells using focused femtosecond laser-induced impulsive force. Appl. Phys. Lett. 2007, 91, 023904 (Cited to Nature Photonics 2007, 1, 507).