奈良先端科学技術大学院大学

物質創成科学研究科 メゾスコピック物質科学講座 

Mesoscopic Materials Science

 現在、我々のグループでは、バイオナノプロセスの基礎であるタンパク質と基板が織り成すナノ機能構造作製の場、「ActiveBio場」の実現を目指している。ここ十年、我々は省エネルギー、省資源、環境にやさしい社会の追求のため、生物のナノ構造構築を応用してタンパク質による個体基板上でのナノ機能構造構築、先端ナノデバイス作り=バイオナノプロセスを推進し、メモリや単電子トランジスタ作製などの成果を上げてきた。これまでの最大の障壁は、固体表面が「原子間力・ファンデルワールス力など近距離力が支配する世界」であり、タンパク質表面が「数ナノメータ単位で非周期的に配置されたペプチド鎖などの要素が時々刻々ダイナミックに動く世界」であって、2つの異なる世界を整合することが難しいことであった。我々のグループでは固体表面とタンパク質表面、及びそれら相互の相互作用の支配法則を理解して有機的に結合する「制御されたナノ構造構築空間」=ActiveBio場を作り出してこの問題を根本的に解決することを目指している。そのため以下の2点を研究推進している。

● 無機材料結合性ペプチドの固体表面認識機構解明を通してタンパク質が固体表面で結合・固定する機構解明を行い、同時にタンパク質集合体が結合、配置、構造構築して行く有機的相互作用機構の解明を行う。

● ActiveBio場で作製したタンパク質分子+固体の構造が生む物性相互作用(タンパク質-基板のコミュニケーション)を詳細に把握し、機能と構造の関係を詳細に解明し、新機能創発を狙う。

 これらは大変基礎的な研究であるが、その波及効果は大変大きい。我々は得られる知見を統合することで。バイオナノプロセス「ウェットナノプロセス」をさらに推し進め、ナノ構造の自動構築を通して、自動修復可能な高感度バイオセンサー、超低消費電子デバイスを作製し、さらには細胞ハンドリングMEMSにまで発展させたいと考えている。

 「ActiveBio場」の研究はモノづくりの考え方、機能発現の発想そのものを変える大きなテーマであり、我々単独では速やかな前進は望めない。そこで現在、金沢大学、がん研究所、京都大学、千葉大学、東京大学、東京工業大学、東北大学、豊橋技術科学大学院大学、横浜国立大学の強力なパートナーと連携を取り研究を進めている。

 我々の研究室では、ウエットナノテクノロジーの研究分野を創造しています。水溶液中でのバイオ分子、有機分子のナノ集積・自己組織化による機能性構造の構築テクノロジーの完成を目指し、現在はたんぱく質をテンプレートとして利用したナノエレクトロニクスデバイスの開発、バイオナノプロセスの研究を行っています。    

 バイオナノプロセスは 半導体のトップダウン技術とバイオのボトムアップ技術を統合してデバイスを作製するプロセスです。

 タンパク質はDNAに蓄えられた情報から作られ、そのサイズは原子レベルで一定なナノサイズです。さらにそれらは自己組織化により10-100nmの構造を自動的に組みあげます。また生物による無機材料析出(biomineralization)により半導体ナノ粒子、ナノワイヤを作れるためナノサイズの構造を作ることも出来ます。トップダウン技術は50nm程度の精度まで種々の構造を容易に作製できるので、両者を組み合わせることで数ナノメートルの構造をもつ電子デバイスが作製できることになります。これはいわゆるプロセスインテグレーションによるキーコンポーネントの作製手法です。

 実際に、球殻状バイオ分子(cage-shaped protein)により作られ一層に並べられたナノドット配列を用いてフローティングゲートメモリが作製され、ナノドットを一層ずつ積み上げる技術で3次元ナノドット構造も作られています。Si基板上にナノドットを配置してそれをマスクとするエッチングで直径8nmのシリコン単結晶カラムも作製できています。